研究内容
以下の6つのテーマについて、3名の教員や博士研究員を中心として、卒論生とも協力しながら研究を進めています。
(1)中間周波帯の電波の生体影響に関する研究
電磁界にばく露されると、体内に誘導電界が生じることで、刺激作用または熱作用による影響がみられます。そのため、電波防護指針により、これらの作用が生じないレベルにばく露量を制限することで、電波の安全性が担保されています。
一方で、これらの作用以外に、発がん性などの「確立されていない作用」と総称される生体影響について、総務省の生体電磁環境研究というプロジェクトで研究が行われています。私たちの研究室では、これまでに「確立されていない作用」として、酸化ストレスや変異原性について検討してきました。その結果、電波防護指針に定められているばく露量の上限値以下では、これらの作用が検出できないことを報告しています。
現在、胎児期に電磁界にばく露したマウスについて、神経発達について行動解析による検討を行っています。
(2)DNA損傷応答の修飾を利用した抗がん剤の開発
細胞に紫外線をばく露すると、一過性に細胞分裂が停止し、損傷したDNAの修復が完了したのち、分裂が再開します。私たちは、DNAの損傷の程度をPCRによる複製反応を利用して定量的に評価するシステムを用いて、DNA修復を阻害せずに、細胞分裂の再開を阻害する化合物を見出し、その作用メカニズムの解析を進めています。また、天然物のライブラリーから他の化合物の探索も行っています。
これらの化合物の研究は、抗がん剤の作用を増強することで投与量を減らし、治療時の副作用を軽減することや耐性を獲得したがん細胞に対する新たな治療の開発に役立つ可能性があります。
(3)精油成分の抗炎症効果に関する研究
アロマテラピーに用いられている精油には、抗炎症作用や抗不安作用などをもつものがあります。私たちの研究室では、ミクログリア細胞の活性化を指標として、これらの精油成分の抗炎症効果について検討し、複数の成分がサイトカインの放出を抑制することを見出しました。 様々な神経変性疾患や難治性のうつ病などで、ミクログリアの慢性的な活性化が起こることが報告されており、ミクログリアの活性化を抑制することにより、疾患の治療に役立つ可能性があります。現在、この精油成分について、動物レベルでの抗炎症効果について検討を行っています。
(4)加熱式たばこの毒性に関する研究
日本における加熱式たばこの販売は、2014年に名古屋でIQOSが先行発売されたことにより始まりました。その後、販売地域は段階的に拡大し、2016年には全国で販売されるようになりました。加熱式たばこについては、従来の紙巻きたばこと比較して有害化学物質へのばく露量が低減するとの報告がある一方で、吸収されるニコチン量は必ずしも減少していないとの指摘もあり、毒性の詳細な解明が求められています。
国立保健医療科学院では、加熱式たばこのエアロゾルをマウスにばく露するための装置を開発し、毒性評価に関する研究を進めています。当研究室では、同院との共同研究として、肝臓をはじめとする各種組織の組織学的解析を行い、加熱式たばこの毒性に関する研究を行っています。
(5)エストロゲン受容体のリン酸化部位の変異体に関する研究
エストロゲンの核内受容体には、ER alphaとER betaの2つのサブタイプがあります。当研究室では、エストロゲン受容体のS216A変異体のノックイン(KI)マウスを用いて、エストロゲン受容体のリン酸化に関する研究を行っています。